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福岡家庭裁判所飯塚支部 昭和39年(少ハ)3号 決定

主文

本件申請を却下する。

理由

一、申請の理由の要旨は次のとおりである。少年は、昭和三九年一一月一三日、収容中自動三輪車運転免許取得を目的として同年一二月一七日までの期間を定めて当裁判所がなした少年院法一一条四項による特別少年院への収容継続決定を受けた者であるが、同年一一月二八日、再三注意を受けたにもかかわらず、寮舎洗面所内での喫煙が発覚し、懲戒処分を受け、自動車科も除籍されるに至つたものであつて、このような行為は当初から指摘されていた内面的自己統制の弱さ、自主性の乏しさに加え規律遵守の精神の乏しさによるものと見られ、矯正の効果が未だ十分でないので二ヶ月の期間を定めて再度収容継続の必要ありというにある。

二、そこで、まず本件の如き再度の収容継続決定が許されるかどうかについて判断する。

そもそも、保護処分は原則として二〇歳未満の者に対してなされるものであつて、少年院法一一条の収容継続決定はその例外をなすものであるから、その解釈は憲法三一条の趣旨から厳格に解釈されねばならないのである。

まず、同条二項の文理解釈からすれば、明らかに、在院者が二〇歳に達したとき、または送致後一年を経過した者のみが収容継続の対象として予定されていると解せざるをえない。もちろん、厳格な解釈必ずしも文理解釈を意味するものではないが、しかし、同条四項において収容継続決定は特に予め期間を定めてなすべきことを規定したのは、例外的なこの収容継続決定を上記の如き人権保障の見地から厳格にその期間によつて限定しようとする趣旨と解すべきであるから、右期間を定めた趣旨を没却するような再度収容継続決定は特別な場合を除き許されないと解すべきである。

その特別な場合として、同条五項に二三歳に達した在院者につき一定の要件のもとに再収容継続決定を認める明文の規定があるが、その趣旨から見て同項と同様の要件を具備した二三歳未満の者に対して医療少年院に再度収容継続を認めないことは明らかに不合理である。従つて、同条二項および四項の解釈としても、右の趣旨を類推して、同条五項と同一ないしはこれと同様の理由ある場合に限り再度収容継続決定をなしうると解する余地があるのではないかと考える。

しかし、何れにしても、本件の如く単に矯正の効果が未だ十分でないという理由のみによる再収容継続の申請は明らかに許されず、不適法と解するので申請の実質的理由を判断するまでもなく主文のとおり決定する。

(裁判官 綱脇和久)

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